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東京地方裁判所 平成9年(特わ)3910号

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官髙畠久尚及び同岩山伸二並びに弁護人(私選)石上尚弘(主任)及び同佐藤利雄各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金四〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪とするべき事実)

被告人は、東京都町田市中町二丁目二一番一五号に居住し、平成七年に自己が共有持分を有する土地を売却譲渡したものであるが、分離前の相被告人柴山幸三、同靜野武弘及び同村岡紀英と共謀の上、被告人の同年分の所得税を免れようと企て、右土地譲渡について、架空の売却手数料を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、実際は、同年分の総合課税の総所得金額が二六六万八九八七円の損失で、分離課税の短期譲渡所得金額が三五八万二一二一円、分離課税の長期譲渡所得金額が七億三三一五万八七五円であった(別紙1の所得金額総括表及び修正損益計算書参照)にもかかわらず、平成八年三月一二日、同市中町三丁目三番六号所轄町田税務署において、同税務署長に対し、平成七年分の分離課税の長期譲渡所得金額が二億五一一万九三八円で、これに対する所得税額が五九四八万三〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(平成一〇年押第四六九号の7)を提出し、もって不正行為により、同年分の正規の所得税額二億一八四二万五四〇〇円と右申告税額との差額一億五八九四万二四〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  第一回公判調書中の被告人の供述部分

一  第一回公判調書中の分離前の相被告人柴山幸三、同靜野武弘及び同村岡紀英の各供述部分

一  被告人の検察官に対する平成九年一〇月二五日付及び同月二六日付(二通)各供述調書

一  分離前の相被告人柴山幸三(平成九年一〇月二七日付・本文三〇丁のもの)、同靜野武弘(同月一九日付謄本・本文二二丁のもの、同月二九日付)及び同村岡紀英(同月二六日付、同月二九日付)の検察官に対する各供述調書

一  佐野榮一の検察官に対する平成九年一〇月一九日付供述調書謄本

一  検察事務官作成の捜査報告書二通

一  大蔵事務官作成の給与収入調査書、給与所得控除調査書、不動産収入調査書、必要経費(不動産所得)調査書、保険代理収入調査書、必要経費(雑所得)調査書、譲渡収入金額(短期譲渡所得)調査書、取得費(短期譲渡所得)調査書、譲渡費用(短期譲渡所得)調査書、譲渡収入金額(長期譲渡所得)調査書、取得費(長期譲渡所得)調査書、譲渡費用(長期譲渡所得)調査書、社会保険料控除調査書、生命保険料控除調査書、損害保険料控除調査書及び扶養控除調査書

一  町田税務署長作成の証拠品提出書

一  大蔵事務官作成の領置てん末書

一  押収してある平成七年分の所得税の確定申告書(分離課税分)一袋(平成一〇年押第四六九号の7)及び譲渡内容についてのお尋ね一袋(同押号の8)

(法令の適用)

罰条 刑法六〇条、所得税法二三八条一項、二項(情状による)

刑種の選択 懲役刑及び罰金刑を選択

労役場留置 刑法一八条

刑の執行猶予 懲役刑につき刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、両親の財産を姉らとともに共同相続した被告人が、賦課された相続税納付のために借り入れた借金の返済及び納付できず延滞していた相続税の納付等のため、相続財産である土地を譲渡した際、いわゆる脱税請負人の共犯者らに依頼して、譲渡に必要な経費を架空計上した上、分離課税の長期譲渡所得金額のみを過少に申告し、その他の所得金額を申告せず、所得税をほ脱した事案であるところ、その犯行動機は、自らの財産的負担を軽減するために、不正な手段により国民の義務を不当に免れようとしたもので、酌量の余地は乏しく、その犯行態様は、共犯者の脱税請負人らに合計一億二〇〇万円もの高額の報酬を支払い、土地譲渡につき架空の土地売却手数料を多額に計上して申告し、その他の収入をすべて除外して申告しないなど悪質であり、そのほ脱税額は一億五八九四万二四〇〇円と高額である上、ほ税率も七二・七パーセント余りと比較的高率であって結果も軽視し得ず、動機、態様、結果に照らし、被告人の本件刑事責任は重いというべきである。

しかしながら、他方、本件は、脱税請負人である共犯者らの主導の下に敢行されたものであって、被告人にはその脱税の方法の詳細まで知らされていなかったこと、被告人は、右のとおり、共犯者らに高額の報酬を支払い、自らの利得はほ脱税額の三分の一程度に止まるところ、現在までに、修正申告を済ませ、本税一億五八九四万二四〇〇円を納付し、延滞税、重加算税等についても、所有不動産を処分するなどして納付する意思を明らかにしていること、被告人には同種前科がなく、改悛の情が顕著であることなど被告人にとって有利に斟酌すべき事情も認められるので、これらの情状を総合勘案した結果、被告人に対しては社会内での自力更生の機会を与えるのが相当であると判断し、懲役刑についてはその執行を猶予することとし、主文掲記の量刑をした次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑-懲役一年六月及び罰金五〇〇〇万円)

(裁判官 成川洋司)

別紙1

所得金額総括表

自 平成7年1月1日

至 平成7年12月31日

五十子紀七郎

<省略>

修正損益計算書

自 平成7年1月1日

至 平成7年12月31日

五十子紀七郎

<省略>

別紙2

ほ脱税額計算書

平成7年分

五十子紀七郎

<省略>

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